Quantcast
Channel: 失われたメディア-8cmCDシングルの世界-
Viewing all 624 articles
Browse latest View live

「さらにコンパクトに」 ソニー編

$
0
0
まだやってる「さらにコンパクトに」シリーズ。

ちょっと飽きてきたのも事実だが、乗りかかった舟。なんとか年内に終わりたい。

今回はソニー盤を並べてみる。

ソニー盤の共通した特徴は灰色の地に白抜き文字。通常の白地に黒文字とは違ったハイソ感あり?

まずは今回の10枚のジャケット。



上段はCBS/SONYで5枚。

「You were mine」 久保田利伸 1988.2.26 10EH 3001
「両手いっぱいのメモリー」 渡辺美奈代 1988.2.26 10EH 3018
「WEARHAM BOAT CLUB」 REBECCA 1989.3.21 10EH 3254
「MONOTONE BOY」 REBECCA 1989.3.21 10EH 3255
SINGIN' IN THE SNOW」 野田幹子 1989.9.21 10EH 3343

下段はEPIC/SONY。

「ONE DIMEの夢」 LOOK 1988.2.26 10・8H-3008
「うみ」 THE真心ブラザーズ 1989.9.1 10・8H-3132
「暮れてゆく空は」 遊佐未森 1989.9.1 10・8H-3139
「別れの街」 鈴木雅之 1989.9.1 10・8H-3140
「BO GUNBOS」 ボ・ガンボス 1989.9.21 10・8H3124


では、CBS/SONYを開いてみる。



CBS/SONYの8㎝CD初回発売分から2枚。日本の8㎝シングルの誕生は1988年2月21日なのでCBSは5日遅れのスタートだった。
久保田利伸盤(10EH 3001)が規格品番的にトップナンバー。渡辺美奈代も同日発売。
この2枚の「さらにコンパクトに」は格子の向こう。格子の向こう編で紹介したブルーハーツ「人にやさしく」(メルダック/日本クラウン)と白黒反転以外同じ。盤の対面には「取扱上のご注意」は2枚共通だが、久保田盤にあるアダプターのつけ方の説明が美奈代のほうにはない。美奈代はアダプターが過去のものとなったあとの再版?

となりはレベッカ2枚。「WEARHAM BOAT CLUB / VIRGINITY」1st/2ndシングルのカップリング再発盤。これは定価1000円(消費税導入前)。「MONOTONE BOY / NERVOUS BUT GLAMOROUS」は7th/8thカップリング。こちらは「税込価格937円(税抜価格910円)」なので1989年4月1日以降の再版。もとが3月21日発売なので、消費税がなかったのは3月31日までの11日間のみ。再版のほうが多いかもしれない。「WEARHAM BOAT CLUB」盤の対面に「さらにコンパクトに」と「取扱上のご注意」と「ディスクをプレーヤーにセットする前に」あり。歌詞カード別刷りでトレー下半分が収納型。「MONOTONE BOY」の盤の対面に何も印刷されていない。トレー下半分の向こうに「ディスクをプレーヤーにセットする前に」「取扱上の注意」(アダプターの説明含む)が詰め込まれていた。コンパクト化の説明はないが、スジ押しはある。

5枚目、野田幹子「SINGIN' IN THE SNOW」CBS/SONYの「10EH~」シリーズの最後を飾ったのがこの盤。盤の対面に「さらにコンパクトに」の説明があるが、これがCBS/SONYでは最後なのではないかと思う。


続いてEPIC/SONY。



EPIC/SONYの8㎝初回発売分から1枚。CBSと同じく1988年2月26日からスタート。「ONE DIMEの夢」のジャケ下半分「さらにコンパクトに」が切り取られていたので、今回のトップ写真に使用した。ちなみにトップナンバー「10・8H-3001」はTM NETWORK「BEYOND THE TIME」だが、1988年3月5日発売なので初回発売分の一枚ではない。

ここから3枚は1989年9月1日発売。真心盤は歌詞別刷り収納型、遊佐未森盤は非収納型の格子。盤の対面にそれぞれのパターンの「さらにコンパクトに」あり。鈴木雅之のはCBS/SONYの「MONOTONE BOY」と同じく「さらにコンパクトに」がないけどスジ押しはあるパターン。

最後は「盤の対面編」でも紹介したボ・ガンボス。完全オリジナルの「さらにコンパクトに楽しく」説明。1989年9月21日はCBS/SONYの野田幹子盤と同日発売。EPIC/SONYもこれより後の「さらにコンパクトに」が発見できなかった。


まとめるとCBS/SONY、EPIC/SONYともに「さらにコンパクトに」は1988年2月26日~1989年9月21日発売の8㎝CDに多く見られる。それ以降のソニー系「さらにコンパクトに」が存在するのか、情報求む。

「さらにコンパクトに」 フリッパーズ・ギター編 1990年

$
0
0
フリッパーズ・ギターは1990年に3枚の8㎝をリリースした。

1st「FRIENDS AGAIN」 1990.1.25
2nd「恋とマシンガン」 1990.5.5
4th「LOVE TRAIN」 1990.11.21


3rdシングル「カメラ! カメラ! カメラ!」も1990年だが、これはマキシシングル(12㎝CD)なのでコンパクトにはならない。

この3枚は格子の向こうにオリジナリティあふれる「さらにコンパクトに」が見える。仕掛けたのはもちろん信藤三雄。


では、「フレンズ・アゲイン」から開いてみよう。



格子の向こう編で紹介した安全地帯盤と同じ説明文。①でトレーを折り切り、③で「スジ押し」という専門用語が登場するのがポイント。文章は同じだけど、絵は完全オリジナル。まず、左上の「さらにコンパクトに」のコピーの下の完成図のジャケットに「FLIPPER'S GUITAR」「FRIENDS AGAIN」の文字が見える。①のトレーを折り切っている手に服の袖が描かれているのも特徴的。


「恋とマシンガン」はどうだろう。



4x4の格子の向こう、16マスの正方形で遊ぶのは信藤さんの得意技。左の列から3段目、4段目、3段目、4段目の4コマに「フレンズ・アゲイン」と同じ説明がある。(ただし③の「ミシン目または、」が省かれている。実際にミシン目はなくスジ押しされているので。)1コマの面積は4分の1になって、せま苦しい。描かれたジャケットは空白。灰色地に白抜き文字はソニー感あり。


最後は「ラブ・トレイン」。



4x4の1マスに説明の1コマを入れるのは「恋とマシンガン」と同じ。こちらは左上から右下への対角線4コマに説明を並べた。「恋とマシンガン」では何とか読めた説明文は、ここでは文字サイズが極小でほとんど読ませる気がないようだ。黒地に白抜きで周りはサイケ模様。意外なことにジャケにはおなじみのショートカット女性像が見える。格子の向こう編で紹介した安全地帯盤と同じ絵(縮小版)を使用しているようだ。


3枚ともジャケにスジ押しあり。1990年はまだコンパクト化が普通に行われていた時期だった。


「さらにコンパクトに」 VAP編~実用新案登録の謎~

$
0
0
レコード会社別「さらにコンパクトに」シリーズ第3弾。

今回はバップ。ポニーキャニオンやソニーに比べるとややマイナーな存在。がんばって10枚並べた。

「さよならのオーシャン」 杉山清貴 1988.2.21 20013-10
「Be Free」 森川美穂 1988.4.6 20033-10
「少年は天使を殺す」 ラ・ムー 1988.6.8 20306-10
「チャンス」 森川美穂 1989.4.19 20335
「渚のすべて」 杉山清貴 1988.7.6 20305-10

「i always was your girl」 everything but the girl 1988.9.14 25501-12
「I Don't Want To Talk About It」 エヴリシング・バット・ザ・ガール 1988.10.21 25502-12
「I wanna be a lucky girl」 慶田朱美 1989.5.21 20342
「WHOOPS! WHAT A PALAVER」 ザ・ラジ・カルテット 1989.4.19 25614
「Da・I・Su・Ki」 PTON! 1991.5.21 VPDC-20415


では、開けてみよう。

まずは前半5枚。



1枚目「さよならのオーシャン」は1986年杉山清貴のソロデビューシングル。日本における8㎝シングルの誕生日、1988年2月21日に再発された。ジャケット裏の「さらにコンパクトに」がその後と上下逆になっている。

森川美穂「Be Free」とラ・ムー「少年は天使を殺す」の「さらにコンパクトに」を並べる。



「Be Free」は盤の対面編でも紹介した。「少年は天使を殺す」もほとんど一緒なのだが、ひとつだけ違いがある。分かるかな?


正解は…



画像中央の(実用新案登録出願中)の1行。1988年4月6日発売の「Be Free」にはなくて、6月8日の「少年は天使を殺す」にはある。この間に8㎝CDコンパクト化の「実用新案登録」をVAPが出願したってこと?VAPがこのコンパクト化のアイデアを発明したのか。わざわざここに書くくらいだから「うちが考えた」との確信があったのだろう。
同じタイプの(実用新案登録出願中)は1989年4月19日発売の森川美穂「チャンス」でも確認できた。


5枚目杉山清貴「渚のすべて」はちょっとレアなパターン。



1988年の盤としては珍しく、コンパクト化の説明がない。歌詞が盤の対面に記載されているのは裏ジャケにカップリング曲のタイアップだった湘南爆走族の絵を入れたから。で、スペースの都合上「さらにコンパクトに」が省かれたのだろう。にもかかわらず、(実用新案登録出願中)のみ残されている!これじゃ何の実用新案なのか分からない。アロハシャツの実用新案かも?と一瞬考えたがそんなわけない。どうしても(実用新案登録出願中)だけは主張しておきたかったんだね。意味が通じなくても。


後半5枚は洋楽率高め。



EBTGの4曲入りCDミニアルバム2枚。1988年9月の「i always was your girl」は盤の対面に、10月の「I Don't Want To Talk About It」は格子の向こうに「さらにコンパクトに」の説明。どちらも(実用新案登録出願中)あり。


8枚目慶田朱美「I wanna be a lucky girl」は格子の向こう編で紹介した。



1989年は出願中のはずだが、(実用新案登録出願中)の文字はどこにも見当たらない。単なる入れ忘れか。同じ(実用新案登録出願中)なしパターンは1989年12月5日発売の筋肉少女帯「元祖高木ブー伝説」でも確認できた。


9枚目のthe raj quartetの4曲入りミニアルバムには1989年4月19日発売。



トレー下半分が折り切られていて見やすいので並べた。右のみ(実用新案登録出願中)あり。


最後の PTON!「Da・I・Su・Ki」はこのシリーズ初の90年代作品!



そう、「さらにコンパクトに」シリーズとして今まで数十枚紹介してきたが、すべて1988年~1990年にリリースされたものだった(1990年はかなり末期的デザインのフリッパーズ3枚のみ)。1991年モノは現時点でこの盤しか確認していない。赤地に白抜き文字が新鮮。(実用新案登録出願中)はまだしっかり入っている。なにより1991年にもなってまだ堂々と「さらにコンパクトに」を推奨し、ジャケにはスジ押しされているのが嬉しいじゃないか。


結局のところ出願が実を結んだのかは定かではない。遅くとも1988年6月8日には出願し、コンパクト化がほぼ過去のものとなった1991年5月21日にはまだ出願中だった。3年も「出願中」ってことは、たぶんダメだったんじゃないかな。


「メリークリスマスが言えない」 稲垣潤一 1990年

$
0
0
稲垣潤一の20thシングル。

8㎝CDで3種類のリリースあり。

左の縦型が1990年11月1日発売のオリジナルシングル。

①メリークリスマスが言えない
作詞:秋元康、作曲:松本俊明、編曲:萩田光雄
ブライアン・ウィルソンぽいコーラスのイントロ。もっと言えば「You Still Believe In Me」のイントロの引用っぽい。静かに雪が降り積もるようなイメージのAメロが美しい。途中から鈴の音が入ってきて一気にクリスマスムードに。キャッチーなサビに重なるコーラスもゴージャス&ホーリー。去年のクリスマスを一緒に過ごした女性をひとりで思い出している設定なのだが、2番のサビ「雪は誰に降るつもりだろう I want to say "Merry Christmas!" 積もらないハート」ってどういう意味?

②Get Back To Myself
作詞:渡辺なつみ、作曲:MAYUMI、編曲:坂本洋
エリクトリックシタールが活躍するアレンジが印象的。ライトなファンク系シティポップス。内容は、初心に帰って夢を追い続けるぞ宣言。

定価930円、レンタル落ち。いただきもので0円。
セピアカラーの稲垣潤一。11月1日リリースで思いっきりクリスマスヒットを狙っているはずだが、ジャケはクリスマス感が足りない。


右上、ちょうど1年後の1991年11月1日発売。

3曲目に「メリークリスマスが言えない」のカラオケを追加した再発盤。ヒット曲としてカラオケ需要があった証。

同じくファンハウスからのクリスマスヒット、辛島美登里「サイレント・イヴ」もオリジナルが1990年で、翌年カラオケが追加された再発盤がリリースされている。1990年から1991年の間に、8㎝シングルにはカラオケ付きが常識になったのだった。

定価930円、中古で216円。
写真の選択間違えてない?これまたクリスマス感ゼロの海バックの写真。全体的に残念デザイン。


1993年には稲垣潤一クリスマスヒットカップリング「クリスマスキャロルの頃には/メリークリスマスが言えない」のマキシシングルがリリースされた。


左下、1994年11月16日発売のリミックス盤。

①メリークリスマスが言えない (Remix Version)
作詞:秋元康、作曲:松本俊明、編曲:萩田光雄
オリジナルは4分25秒、このリミックスは4分40秒。15秒の違いはアウトロ。どちらもフェイドアウトではあるが、リミックスではバックの音が薄くなって幕を閉じる。他の違いは分からなかった。

②永遠より長いキス
作詞:秋元康、作曲:MAYUMI、編曲:塩入俊哉・稲垣潤一
カップリングを替えてきた。でも作曲家は同じ。同タイトルの日置明子のシングルが1995年にリリースされているが、まったく別の曲。

定価1000円、中古で100円。
クリスマスかと言われると微妙だが、3枚の中では比較的納得できるジャケ。

メリークリスマス。

21世紀の「さらにコンパクトに」

$
0
0
コンパクト化説明について語るシリーズ9回目。

最後は21世紀もの。21世紀の8cmCDリストは今年4月に書いた。その中でコンパクト化説明のあるものを紹介。

カノウ一派3枚+ユメトコスメで4枚。

Mは三つ目で マゾじゃない」 中学生棺桶 2010年
離婚倶楽部 / オルガまだか」 例のK 2012年
ワケありDANCEたてついて / POISON~プワゾン~」 ベッド・イン 2014年

キスとかキライとか」 ユメトコスメ 2012年


開いてみよう。



ベッド・インのみ盤の対面、他の3枚は格子の向こうに見える。


まずは中学生棺桶。



格子の向こうに隠れているが、「さらにコンパクトに」のコピーあり。左上、完成図に描かれたジャケットは中学生棺桶とは関係なさそうな黒髪ロングの女性。しっかり顔が描かれたオリジナルの絵。完成図以外の3コマは格子の向こう編で紹介した安全地帯の盤のほぼ完コピ。ただしジャケにはミシン目もスジ押しもない。


つづいて、中学生棺桶の後継バンド、例のK。トレーの糊付けが取れたので格子なしの写真が撮れた。



中学生棺桶の盤と完成図以外の3コマはまったく同じ。左上のジャケットが例のKメンバー5人のイラスト。


3枚目。例のKのジャケで睨みををきかせているアカナ=中尊寺まいが益子寺かおりと組んだユニット、ベッド・インのデビューシングル。



上記2枚と完成図以外の3コマは同じ。完成図のジャケにキャッツ・アイ風のベッド・インのふたりが描かれている。コマの左下には「イラスト:中川ホメオパシー」の記載あり。


最後はユメトコスメ。発売は例のKと同じ2012年。



格子の向こうなのに透明トレーなのでちゃんと見えるのが新鮮。ふと気づくと、今まで紹介した格子の向こうモノはすべて白トレーだった。透明トレーの出現は1990年以降だったのか。これには「さらにコンパクトに」のコピーなし。格子の向こう編で紹介した野村宏伸盤と上半分(コンパクト化説明部分)は同じ。説明にある爪や切り込みはもちろんジャケには存在しない。下半分にはアダプターのつけ方図解あり。すべてスキャンして取り込んでいるようだ。

20世紀では、1991年を最後に消えたっぽい「さらにコンパクトに」。
21世紀にもなってわざわざコンパクト化説明をつけるのはノスタルジー以外の理由はないだろう。実際に畳んじゃう人はまずいないだろうし。ユメトコスメ以外の3枚にかかわっている、かのう葉蔵の短冊シングルへのこだわりはこちらを参照。長谷泰宏もおそらく相当な8㎝好きと見た。

「DON'T LET THE SUN GO DOWN ON ME」 ジョージ・マイケル&エルトン・ジョン 1991年

$
0
0
"DON'T LET THE SUN GO DOWN ON ME" GEORGE MICHAEL, ELTON JOHN 1991

ジョージ・マイケルとエルトン・ジョンのデュエット・ライヴ・シングル。

①DON'T LET THE SUN GO DOWN ON ME
(E. John/B. Taupin)
オリジナルはエルトン・ジョン、1974年。1991年3月23日、ウェンブリー・アリーナでのライヴ録音。その名も「Cover to Cover tour」と称したカヴァー中心のツアーから。Wikiでセットリストが確認できるが、何と34曲も演奏された。ワム!を含めたオリジナル曲もやったが、好きな曲をガンガン歌いたい!という気持ちがセットリストから感じ取れる。デヴィッド・ボウイの「フェイム」やレナード・コーエン「スザンヌ」も歌ってた。同時代ものではソウルⅡソウル「バック・トゥ・ライフ」、ポリス「見つめていたい」、テレンス・トレント・ダービー「サイン・ユア・ネーム」なども。
この曲はコンサート終盤に演奏されたようだ。抑えた調子の導入からじっくりじっくり盛り上げ、1番を歌いきる。この段階ではもちろんフルパワーではない。間奏で「Ladies and gentlemen, Mr. Elton John!」とジョージ・マイケルに紹介され、2番を歌い出すサプライズ・ゲスト、エルトン。ウェンブリーは興奮のるつぼ。客席のどよめきがなかなか収まらない中、熱のこもったエルトンの歌唱は何度聴いてもグッとくる。裏でフェイクを入れてくるマイケルとの声の相性よし。サビではもちろんハモるし、掛け合いの迫力も素晴らしすぎる、こってりした名演。これをシングルにしたくなるのはよく分かる。全米&全英1位も納得の5分51秒。

②I BELIEVE (When I Fall In Love It Will Be Forever)
(Wonder/Wright)
オリジナルはスティービー・ワンダー、1972年。アルバム『Talking Book』の最後に収められたスピリチュアルな高揚感にあふれた作品。同じく「Cover to Cover tour」からのライヴ録音だが、①では明記してあった日付と場所の記載がない。①と同様、シンガーとしての自信に満ちあふれた歌声が聴ける。このツアーでは他に「迷信」「リヴィング・フォー・ザ・シティー」と計3曲のスティービー作品をとりあげた。7分2秒でフェイドアウトだから実際の演奏はもっと長かったようだ。

定価800円、中古で52円。
黒緑バックに白抜き文字のシンプルなジャケ。


思えば今年は干支にちなんでジョージ・マイケル「MONKEY」で始めたのだった。最後がジョージ・マイケル追悼になるとは。安らかに。

では、また来年。

「Fly」 SMAP 1999年

$
0
0
SMAPの30thシングルにして、最後の8㎝シングル。

①Fly
作詞:ゆかり美和、作曲:野戸久嗣、編曲:岡雄三、ホーンアレンジ:村田陽一
『フレッシュ』時代のスライかと思うくらいクールで薄い音のイントロが期待させるハードボイルド・ファンク。いつものユニゾンが始まると多少のズッコケ感は否めないのだが、なんとか聴き手の緊張感は維持できるレベル。A-A-B-C-サビの構成で、淡々としたAメロから徐々に熱を帯び、盛り上がっていく展開。B-Cあたりにソロパートを入れて変化を持たせている。Cメロ最後「開くべきだ(ブレス)ぜ~」のブレスのタイミングからブラスセクションが入ってくるのが熱い。サビではソウル系女性コーラスが入ってきて木村のシャウトもいつになく力強い。3分過ぎ、一旦リズム隊が消えたあとドラムとギターのみの最もバックが薄い状態でソロをとるのが中居。ここがある意味最もスリリング。女性コーラスの先導でユニゾンが戻ってきた時の安堵感!
この曲はリアルタイムで聴いてちょっとカッコいいなと気になった。こんなファンクをシングルリリースするとは、グループの勢いと自信を感じたものさ。

②End of time
作詞:坂田直子、作曲:西村一彦、編曲:飯星裕史
スムースに流れるシティポップス調のナンバー。ソロで歌われるAメロは難しいのだとは思うが、1番も2番もふらふらで酔いそうになる。サビ「輝きつづけよう」の「よう」で声を張り上げるユニゾン!完全に曲をぶち壊しているのだが、これがSMAPの味なのかもしれない。

③④カラオケ

定価1020円、中古で100円。
光沢のある紙に黒バックの5人。人気者の風格があるな。上の「BIRDMAN」は封入されていたステッカー。「Fly」PVのコンセプトがBIRDMAN、このシングルの翌月にリリースされたアルバムが『BIRDMAN〜SMAP 013』だった。

「すき」 香西かおり 1997年

$
0
0
恒例、年末の紅白歌合戦をふり返る。

今回はほとんどリアルタイムで見なかった。SNS界隈でだいぶ評判悪いなーと思いつつ、やっと見終わったので書く。大晦日に見た人が盛り上がれないものは、今見てもやっぱり辛い。今回は前半。

有村架純のキョト顔と相葉雅紀のギリギリ感。頼みの武田アナもなんだかフワフワした雰囲気で心の拠り所がない。タモリ&マツコも拠り所にはなり得ないマージナルな存在として登場していたしな。司会を私に選ばせてもらえるなら、紅組は満島ひかり&清水ミチコのダブル徹子、白組は大泉洋&藤井隆でお願いします。

初登場PUFFY。「アジアの純真」~「渚にまつわるエトセトラ」をメドレーで。裏トークの西川貴教にどうしても期待してしまう。バナナマン設楽に「PUFFYのどっちが好き?」と訊かれ「どっちかというと吉村さん」と答える西川。歌い出すと吉村さんのパートを熱唱!今回さすがに金爆は出なかったので西川さんの歌声が最も輝いたのはここだった。「あとでLINEするよ~」あー今も仲いいんだね。

14曲目が今回の8㎝、香西かおり「すき」だった。

①すき
作詞:香西かおり、作曲:玉置浩二、編曲:若草恵
代表作「無言坂」(1993)に続く玉置浩二作品。切々したAメロの行きつ戻りつする音符が、迷いを抱えた女性の心情を描き出す。サビはこれでもかとウエットに盛り上げるが、最後の「すき」が放り投げるように歌われ、展開的にも「あれ、これで終わり?」と急に宙ぶらりんにされるような幕切れ。この余白の美学は計算どおりだろう。どこかカラッとしていて情に流されすぎない香西さんの声の魅力が、この作品でも活かされている。
今回の紅白のステージは「すき〜真田丸スペシャルVer.〜」と題され、草刈正雄の前説(ちょっと力入りすぎた)、冒頭に三浦文彰のバイオリンによる「真田丸」テーマをもってきてスクリーンには名場面を流した。そして歌唱中ずっと橋本マナミがくるくる回る、こってり真田丸づくし。
そんなにヒットしたわけではないのに今回これが選曲されたのはなぜだったのだろう。「無言坂」は過去5回も歌われ、2012年からは「酒のやど」を3年連続で歌った。そろそろ別の曲を、ってことで選んだのかな。とくに内容が真田丸に合ってるとは思えないが。

②あゝ人恋し(アコースティック・ヴァージョン)
作詞:市川睦月、作曲:玉置浩二、編曲:川村栄二
「無言坂」のカップリングだった曲をヴァージョン違いで収録。オリジナルも川村栄二のアレンジだったが、ドラムとシンセがうるさかったので作り直してみたくなったのだろう。

③④カラオケ

定価1000円、中古で300円。
無言坂は日本髪に着物のジャケだったが、こちらはポップス寄りに髪を下したかおり。


前半のハイライトは郷ひろみ「言えないよ」。これ、1994年で8㎝シングルでリリースあるのに持ってなかったのは不覚。
それはともかく、土屋太鳳の気持ちの入ったダンスが素晴らしかった!最後の郷ひろみとのハグ、ちょっとグッときた。


V6は「WAになっておどろう」をメドレーの1曲目に披露。

ゆずは坂本九カヴァー「見上げてごらん夜の星を」を歌い、前半終了。ラブリーサマーちゃんが「おじいちゃんの曲だ」ってつぶやいてた。

PPAPをはさんでの後半につづく。




「TWILIGHT TIME IN WINTER」 M. J LOVERS 1992年

$
0
0
ヘンリー片岡と鷺巣詩郎によるウィンターソング制作ユニット、M. J LOVERS唯一のシングル。

同ユニットには2枚のオリジナルアルバムと1枚のオムニバスアルバムへの参加があるようだ。ユニット名は様々。

Mrs. Jones Lovers『SNOWBIRD HOTEL』 1990年
M.J LOVERS『RHAPSODY IN WINTER』 1991年

NO-WEATHERS『SPRING SNOW』 1997年(ヘンリー片岡&鷺巣詩郎以外も入ってるオムニバス)

「M.J」はマイケル・ジャクソンではなく、Mrs. Jonesだったのか。Mrs. JonesといえばBilly Paul「Me and Mrs. Jones」、ギャンブル&ハフ的なものを目指したユニットだった?


①MY BIRD, SWEET HOME 「街に住んでいるクルマ」スズキ・カルタス イメージソング
作詞・作曲:ヘンリー片岡&鷺巣詩郎、編曲:鷺巣詩郎
Vocal:片山圭司
片山圭司が堂々歌い上げる、やや暑苦しいソウルナンバー。既視感のあるサビは何かに似ているからなのか、この曲をCMで聴いていたからなのか。アルバム未収録。

②TWILIGHT TIME IN WINTER
作詞・作曲:ヘンリー片岡&鷺巣詩郎、編曲:鷺巣詩郎
Vocal:山川恵津子
山川恵津子の歌声が聴けるのは東北新幹線『THRU TRAFFIC』(1982)以来?タイトルどおり黄昏た味わいのしっとりAOR。恵津子さんのヴォーカルは、アダルトなムードの中にも可愛らしさが見え隠れする。作曲&編曲の才能がありすぎて、ヴォーカリストとしては誰も注目していなかった山川恵津子を引っぱりだしたのは鷺巣詩郎の仕業か(このふたりは80年代のアイドル仕事で出会っていたはず)。5年前に泊まったゲレンデが近いホテルでよりを戻そうとする男女。一旦別れたふたりが(おそらく数年のインターバルがあるのに)いきなりリゾートホテルで待ち合わせって設定がちょっと無理があるような。早めに着いた「私」が「あなたと逢う前に 髪を洗って待つわ」は、妙に生々しい。別れ話の前に髪を洗って出かけた、荒井由実作詞「スカイレストラン」の逆だな。
ちょっと細かいことを言うと、サビで「TWILIGHT」の「T」に一音が当てられ、「と-WI-LIGHT」と3音節で歌われるのが気になってしまう。
アルバム『RHAPSODY IN WINTER』(1991)収録曲。アルバムでは10曲中6曲で山川恵津子がヴォーカルをとっている(残りの4曲は高尾直樹)。

定価930円、中古で108円。
やっつけ感のあるイラストジャケ。

「企画・設計:ヘンリー片岡」と見慣れないクレジットがあるが、これはプロデューサーってことでいいのか。ところでヘンリー片岡って誰かの変名?情報がなさすぎて存在が疑われるレベル。

「ごめんね・・・」 高橋真梨子、「JAM」 THE YELLOW MONKEY 1996年

$
0
0
紅白2016後半。

美空ひばり「川の流れように」(1989)を島津亜矢が歌った。ま、一応オリジナルを並べとく。

初出場、KinKi Kidsはデビュー曲「硝子の少年」。リアルタイムではまったくピンとこず、古臭い曲だなぁと思っていたのに、今大人になったキンキのおふたりが歌うとなかなかどうして味わい深いじゃないか。「硝子の少年時代の破片が胸へと突き刺さる」中年ふたり。松本隆+山下達郎は約20年後のこのシーンを見越した曲作りをしていたのか?と思うほど今のふたりにフィットしていた。

星野源はPPAPとならぶ真の2016年ヒット「恋」。ガッキーの目を伏せながらの恋ダンスも萌えたが、長岡亮介(浮雲)がダンサーの動きに合わせてわざと伊賀航に当たっていくシーン(しかも2回)に私の中の腐女子が目覚めてしまいそうになった。伊賀航ショウ、最高です。

エディット・ピアフの代表作「HYMNE A L'AMOUR」を越路吹雪が岩谷時子の日本語詞でカヴァーしヒット。初出場の大竹しのぶは松永祐子の訳詞で歌った。ぎゃー目がコワイ!

坂本冬美「夜桜お七」(1994)とX JAPAN「紅」(1989)はいずれも8㎝シングルだが、残念ながら持ってない。個人的には何の思い入れもないエックスの皆さんに同情していしまうくらい事故級のゴジラネタだったな。


唐突に登場したポール・マッカートニー。来日プロモーションを高視聴率番組で行う74歳。閉店セール商法もたいがいにしなさいよ、とそろそろツッコんであげなくていいのか。

ポールにつづき、ラスト3組で実現した1996年短冊対決!


先攻、紅組高橋真梨子は自身最大のヒットである26thシングルで勝負。

①ごめんね… 日本テレビ系「火曜サスペンス劇場」主題歌
作詞:高橋真梨子、作曲:水島康宏、編曲:十川知司
歌唱力をこれでもかと見せつける濃口バラード。カラオケ人気もあったというが、こんなの素人に歌いこなせるのか?別にカラオケは本人が気分よければいいか。本人作の歌詞は結構酷い内容。「悪ふざけで 他の人 身を任せた」主人公を一晩中待ち続けた「貴方」。最終的に「連れて行って 別離のない国へ」。火サスワールドで考えれば、この主人公は「貴方」に殺された被害者のようにもとれる。一夜の過ちが許せなかった男が犯行におよんだ純愛殺人てことで。歌詞中には一度も「ごめんね…」が出てこないのがテクニカル。
紅白での演奏はキーボードが3人もいて、インパクトあった。

②Good-by Love
作詞:高橋真梨子、作曲:HIROSHI、編曲:大森俊之
タイトルからして悲しい失恋ソング。そういえば夫はヘンリー広瀬。いや最近ヘンリーについて考えてたから。

③④カラオケ

定価1000円、中古で52円。
高橋真梨子のジャケってどれも似たような雰囲気で、持っているやつかそうでないかの判別が難しい。ちゃんとリストにしたのは最近で、あと2枚でコンプリートというところまできた。


対する白組THE YELLOW MONKEY(初出場)は代表作となった9thシングル。

①JAM
作詞・作曲:吉井和哉、編曲:THE YELLOW MONKEY
教会音楽ぽい荘厳な導入から、リズムが入ってくるところでグッとくるロッカバラッド。イエモンはもっとグラムでやんちゃな曲(たとえばカップリング曲のような)が持ち味だとは思うが、こういう内面吐露型のドラマチックな曲で勝負したくなる時期だったんだろう。デヴィッド・ボウイ作「すべての若き野郎ども(All the Young Dudes)」を意識して作ったとのこと。なるほど、そういわれると共通するガッツとアンセム感。紅白終盤にふさわしい終末ムードもある。

②Tactics
作詞・作曲:吉井和哉、編曲:THE YELLOW MONKEY
クネクネ踊りたくなるギターリフ。グラムロックバンドとしての面目躍如。

③④カラオケ

定価1000円、中古で108円。
じつは今月ブックオフで買ったばかり。傘ジャケだった。


紅組トリは石川さゆり「天城越え」、ついに同一曲10回出場の新記録!今年の年末には「津軽海峡・冬景色」が並ぶ見込み。もうさゆりも諦めがついたか。

白組トリは嵐メドレー。1曲目に「A・RA・SHI」。メドレー後半、相葉くんが放心状態になり、最終的には感極まって涙をぬぐうシーンに紅白司会の重圧を見た。

裏トーク、西川貴教戻ってこなかったね…

ではまた来年。よいお年を。

帰ってきた「さらにコンパクトに」 トイズファクトリー編

$
0
0
まだやるのか、まだやるよ。

20世紀最後の「さらにコンパクトに」はどれなんだ問題。

年末の調査ではVAP編のPTON!「Da・I・Su・Ki」が1991年5月21日で最新とか言ってた。ちっちっちっ…甘い甘い。1992年みつけた。

VAPから独立する形で1990年に設立されたトイズファクトリー。販売はバップが行っていた。


初期TOY'S FACTORYを代表するふたつのバンドの8㎝を並べる。

「バトル野郎〜100万人の兄貴〜」 筋肉少女帯 1992.6.21 TFDC-28011
「君がいた夏」 Mr.Children 1992.8.21 TFDC-28012


規格品番が連番の2枚。さあ、開いてみよう。



筋肉少女帯盤では1992年にもなるのに格子の向こうに「さらにコンパクトに」が!ジャケにはスジ押し、爪も切り込みも健在。まだまだ時代はコンパクト化!

2か月後のミスチルのデビューシングルでは格子の向こうに見えるのは「8センチCD用アダプターについて」のみ。すっかりコンパクト化のことは忘れたかのようだ。


筋少の格子の向こうを拡大。



ちょうど真ん中の丸い部分に重なって見づらいが、VAP名物(実用新案登録出願中)の文字が確認できる。もちろんミスチル盤にはそんなメッセージは存在しない。

たぶんこれが「実用新案登録出願中」の最後の一枚だろう。


もしかすると「さらにコンパクトに」は、この1992年6月21日以降のものがあるのかもしれない。ないのかもしれない。

見つけた方はご一報いただけると嬉しい。

「なぜ」 斉藤由貴 1994年

$
0
0
斉藤由貴の16thシングル。

シングルとしては1992年の「いつか」から2年10か月ぶりのリリース。このあと17thシングル「こむぎいろの天使」までは5年の時が流れるので、シンガー斉藤由貴としての大きなピリオドといえるシングルだ。

①なぜ
作詞:斉藤由貴、作曲:筒美京平、編曲:澤近泰輔
キーボード+アコギ主体のアレンジをバックに、しっとりつぶやくように歌を紡ぐ由貴さま。声には初々しさも感じられるものの、歌唱はデビュー当時とは比べものにならない安定感あり。ちょっと音域が高いかなとも思うが、諦めまじりのウィスパー「なぜ?」の切なさを最大限に引き出す設定なのだろう。1番をドラムレスで歌いきり、2番からは控えめにドラムが入ってくる。まこりんのわがままなご意見でも指摘されているように2番の歌詞は明らかに「卒業」を意識している。「なぜなぜ ホームで ガラスの向こう 手をふった私に気付かないように 目を伏せたの」結果的にはこれが最後ではなかったけれど、斉藤由貴は音楽活動の区切りを意識してこの歌詞を書いたはず。デビュー作と同じ筒美京平の曲で、ふたたび駅のホーム設定をもってくるのが嬉しいじゃないか。
2番以降はダブルヴォーカルで切なさ倍増。3番ではバックのサウンドもクレッシェンドしていく。歌の最後、すべての音が止んで裸のまま放り投げられるかすれ声の「…なぜ?」にグッとくる。名作。

②ふり向けばただの一日
作詞:鮎川めぐみ、作曲:筒美京平、編曲:澤近泰輔
カップリングのほうはいつもの斉藤由貴の声(音域)が楽しめるポップス。ユーミン「消息」(1982)にちょっと似た、突き放したようなサビが美しい。「どんなに傷ついても日々は続いてく」「せめてあなた悩ますほど さり気なくいつものままで別れましょう」こちらは自作ではないが、当時の斉藤由貴のいろいろあった感を踏まえると重みのあるライン。完成度高いのにアルバム『moi』(1994)には未収録だった。2007年の『斉藤由貴 SINGLESコンプリート』に収録。

③④カラオケ

定価1000円、中古で100円。
斉藤由貴、28歳。初々しさの塊だった18歳でのビュー曲から約10年。すっかり貫禄のある魔性の女になった由貴さま。

「ダブル ゲーム」 南野陽子 1990年

$
0
0
南野陽子の17thシングル。

①ダブルゲーム
作詞:荒木とよひさ、作曲:三木たかし、編曲:若草恵
「テレサ・テンのような大人の歌を歌いたい」って、世の脱アイドル宣言の中でも相当ぶっとび系だろう。当時のナンノは人気のピークを越えてやや下り坂に入ったところ。「身の程知らず」ときちんと忠告できるブレーンがいなかったんだろうね。本人がそう言うなら…てなノリで、「つぐない」「時の流れに身をまかせ」などのテレサの代表曲を書いたソングライトチームが呼べちゃうのだから、まだまだ勢いはあったということか。期待どおりのアダルト歌謡を受け取ったナンノ。歌ってみて本人はどうだったのだろう。そりゃまあデビュー当時よりは進歩しているとは思うが、ムード系を歌うには声の湿度が低すぎた。アイドルシンガーとして実力以上の成功を収めたあと、ナンノ22歳の迷走のはじまり。翌1991年のSSWとしてのアルバムで歌手活動終了。2005年にセルフカヴァーシングルで復活、その後は沈黙。

②サイド・シートに答えて
作詞:南野陽子、作曲:黒沢健一、編曲:新川博
こちらもアダルト路線ではあるが、ビートが効いた歌謡曲で比較的安心して聴ける。「先の見えない恋」に苛立つ主人公。女心の焦りを感じさせるキャッチーなサビでは「どこにもいけない 私をさらって」。当時のナンノの行き詰まり感を表現しているのかも?と深読みしたくなる自作詞。

定価800円、中古で100円。
目を伏せて薄幸美女の雰囲気。

「Ring Ring Ring」 YUI 1997年

$
0
0
浅香唯がYUI名義で4年ぶりにリリースした通算23rdシングル。YUIとしては1枚目のシングル。

YUI名義の音源はこれと翌年の「不器用な天使」のシングル2枚のみ。アルバムは作られなかった。

①Ring Ring Ring
作詞:YUI、作曲:安田信二・HALNEN、編曲:安田信二
ウォール・オブ・サウンド。YUIとして生まれ変わった元アイドルが打ち出した新機軸は、明確なスペクター志向。曲調も60'sガールグループぽいし。作編曲の安田信二は、浅香唯としての前作「ひとり」(1993)も書いている。レコード会社を移籍し、長いブランクもあったのに同じ作家を起用してイメージチェンジ。YUI自作の歌詞は「生まれ変わるように」「正気ならもう枯れ果てた」「あたしまだ生きてるわ」「ほらまだ笑えるから」と完全に病み上がりムード。空白の4年間にいろいろあったことをうかがわせる、セルフカウンセリング的な内容になっている。もうちょっとドリーミーな歌詞のほうがよかったとは思うが、サウンドに溶けてしまえばそれほど気にならない。
上記のとおりYUIとしてのオリジナルアルバムは存在しない。しかし浅香唯のベスト盤に収録されている他、2008年のコンピレーション『音壁JAPAN』に大瀧詠一、シュガー・ベイブ、松田聖子といった面々とともにこの曲がセレクトされている。

②シュールリアクション
作詞:YUI、作曲:HALNEN、編曲:安田信二
こちらば音壁系ではなく、英国の香り漂うロックサウンド。ま、オアシス歌謡と言って差し支えない雰囲気の佳曲。

③④カラオケ

定価1020円、中古で1000円。
浅香唯、27歳。メイクばっちりすぎてちょっと誰だか分からない。


12周年 白黒ジャケx12

$
0
0
12年前の今日始めたブログ。干支ひと回りしてしまった。

何度も書いているが、当初は1年くらいやったらネタ切れ終了の予定だった。それがどうだ、12年もやってるなんて。12年後もやってたらどうしよう。

というわけで、12周年を記念して12枚並べてみようシリーズ第1回!12回までやるかどうかは未定。

女性アーティストの白黒ジャケを並べてみた。一部文字などに色がついているものもあるが、遠目に見ればほぼ白黒。


では、上段左から。あいうえお順。

「RESPECT the POWER OF LOVE」 安室奈美恵 1999 
いきなりだけど文字が薄黄色。ビニール袋に貼られたシールも白黒。これ、全身像ジャケ12でも使えるな。

First Love」 宇多田ヒカル 1999
ヒッキーの3rdはすでに貫禄すら感じさせる白黒。

「My Baby Grand〜ぬくもりが欲しくて〜」 ZARD 1997
ZARDの文字だけ黄色。坂井泉水さんの座った全身像。

ロックの好きなベイビー抱いて」 シーナ&ザ・ロケッツ 1994
シーナの衣装はたぶん本当に黒。そして信藤三雄。

早春」 高山美図紀 1991
デビューシングルがいきなり白黒。これは見本盤だけど正規盤も白黒(文字のフォントが異なる)。

「サルの歌」 橘いずみ 1993
闇に溶けているが、橘さんの座った全身像。


つづいて下段。

港のマリー」 夏木マリ 1995
タバコをくゆらす夏木マリ。信藤三雄短冊の最高峰。

「陽の当たる大通り」 ピチカート・ファイヴ 1994
つづけて信藤三雄。野宮真貴の顔を切ってしまう大胆デザイン。

「空っぽの愛の嵐」 松雪泰子 1997
はい、これも信藤三雄。女優らしく、作りこんだイメージ。

空気みたいに愛してる」 裕木奈江 1994
信藤三雄じゃない。下のほうの文字が草色。

「GRACES」 吉田美奈子 1996
写っているのは吉田美奈子じゃない。たぶんモデルさん。

「THIS IS YOUR NIGHT」 夜空 1996
最後は大阪パフォーマンスドール上田美穂のソロプロジェクト唯一のシングル。


13年目もよろしく。


「Stay with me」 松たか子 1998年

$
0
0
松たか子の7thシングルは、最後の8㎝シングル。

①Stay with me
作詞:松たか子、作曲・編曲:武部聡志
感傷的なピアノのイントロから、歌と同時に入ってくるリズムはわりとくっきり。「ねぇ 何か答えてよ」と「ねぇ」が頭で繰り返されるAメロで聴き手との間合いをつめてくる。「友達でいる時が長すぎたの?」と問いかけてくる陰りのあるBメロから、美しく解放感のあるサビへ。控えめな佐藤竹善のコーラスが、間奏ではぐっと前に出てきて盛り上げる。そのあとのサビ「愛には愛で 答えてほしい」はチャゲアス「SAY YES」(1991)の「愛には愛で 感じ合おうよ」の部分と完全に呼応している。位置(サビ頭)、テンポ感、符割り、絶対意識して書いてるだろ。サビ終わり「もう戻れない」で松たか子の音域限界の高さに上りつめるのが、戻ってこれない感があってナイス。最後リズムがまた消えてピアノをバックに2番のAメロがもう一度歌われ、静かに曲が閉じられる。ピアノのアウトロがイントロに戻ってくる印象で、全体が円環=主人公の思考の堂々巡りのような効果をあげている。編曲家として名高い武部聡志の、名曲&名編曲。

②Kisses
作詞:岩里祐穂、作曲:上田知華、編曲:武部聡志
こちらもピアノのイントロ。隙間(休符)の多いAメロが進行形の恋愛なのに回想のようなムード。タイトルどおり最初から最後までキスについて歌っている。「いつか 白いベールをあげて 誓いのキスをしようよ」なんてちょっと恥ずかしくなる展開も、たか子の伸びやかな声で歌われると「…う、うん、そうだね…」と納得してしまいそうになる。最後の最後「大好き」をじっくり2回繰り返すのは、さすがにやりすぎな感じはあるけどな!

③④カラオケ

定価1020円、中古で52円。
木漏れ日を浴び、道に座るたか子、21歳。

白黒ジャケx12 男性アーティスト編

$
0
0
2月21日は日本における8㎝CDの誕生日。1988年誕生なので今日で29年、来年で30年か。

当ブログ12周年企画として、前々回女性アーティストの白黒ジャケを12枚並べた。

今回は男性編。女性編はあいうえお順で並べたが、今回は白っぽいのと黒っぽいので上下に分けてみた。

では白っぽい上段から。

抱きしめたい」 benzo 1998
今回の12枚で今まで内容を紹介したのはこれだけ。バンドメンバー4人がちゃんと写っているのにこんなに白いなんて。

「今 僕を泣かせて」 斉藤誠 1996
前半6枚では唯一のソロアーティスト。3人いるみたいなジャケだけど、すべて斉藤誠。

「SUNDAY LOVE」 LONG VACATION 1993
メンバー3人は鏡の中。右手に女性モデル。

「リリィ」 ミッシェル・ガン・エレファント 1996
メンバー4人と思われるが、最も大きく映っているチバユウスケ以外は判別不能。

「ファンキー・モンキー・ベイビー」 憂歌団 1994
メンバー4人の後頭部を縦に並べた。

「ダイナマイト」 SMAP 1997
荒い粒子のメンバー5人の顔を並べた。チープなデザインが逆に王者の風格。SMAP絶頂期のヒット曲。


下段、黒っぽい6枚。

「君を待つシーソー」 渡辺謙 1990
黒い。サングラスも黒い。文字はシルバー。

「Colour My World」 池田聡 1998
顔を覆った手の部分に丸い窓が開いていて、透明プラスチックトレーの格子部分が覗いている。格子をジャケに取り込んだ画期的デザイン。文字には極薄い赤みが入っている。

「Heavy so Heavy」 THE MODS 1997
しかめ面でタバコをくゆらす森山達也(中央)。他のメンバー3人は全員顔が切れている。タールとワルの匂いのする黒。

「I love you」 パラダイス・ガラージ 1998
歌詞の一部が書かれた、黒バックに白抜きの文字ジャケ。

「ROSIER」 LINA SEA 1994
棺桶ジャケ。死をイメージした黒。

「どうしようもない僕に天使が降りてきた」 槇原敬之 1996
真っ黒面積率では圧勝。環形蛍光管を5つ並べ、天使を表現。



「そして伝説へ・・・」 鴻上尚史 1988年

$
0
0
鴻上尚史の唯一のシングル。

RPG「ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ…」便乗企画。

①そして伝説へ…
作詞:鴻上尚史、補作詞:藤公之助、作曲:すぎやまこういち、編曲:藤原いくろう
当時オールナイトニッポンのパーソナリティだった鴻上が、リスナーから募集した歌詞を元にドラクエⅢエンディング曲を自ら歌っちゃった。ハードロックなギターイントロからゲームミュージックぽい音色の鍵盤の音。すぎやまこういちによる曲は勇者が力強く歩みを進めていくイメージの勇まし系。鴻上尚史の歌唱は想定内の素人レベル。。ドラクエ(というかゲーム全般)知らないのでストーリーとのつながりは分からないが、歌詞はまったくおふざけなしの普遍的な言葉で綴られている。普通に聴けば何コレ?としか思えないものも、深夜放送独特の悪ノリ感が共犯者たちにはたまらなかったのだろうと想像。

②冒険の旅 ADVENTURE
作詞:鴻上尚史、補作詞:藤公之助、作曲:すぎやまこういち、編曲:藤原いくろう
こちらも壮大な世界観をうかがわせる作品。1番では「ボヘイミよ」「ここでベホマズンが使えたら」とドラクエ世界の呪文が現れ、2番では「人生が はじけるぞ ブラウン管の中でまぶしく」とメタ視点へ。3番では「ありがとう ドラクエよ 笑うやつにゃ 笑わせておけ すきだぁ、すきだぁ」と最後は絶叫で鴻上のドラクエ愛が爆発する。

定価937円、中古で21円。
ゲームキャラのコスプレ集団。中央はもちろん鴻上尚史。福助人形が左手に見えるので『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』アルバムジャケのパロディと分かる。最前列には「THE BEATLES」の代わりに「KOHKAMI」のモザイク文字。しかしせっかくの手の込んだビジュアルも短冊上半分では小さすぎだろ。裏にはジャケット出演者一覧(17名)はあるのにミュージシャンクレジットはない。

「カーテンコール」 森光子 1995年

$
0
0
森光子が75歳でリリースした8㎝シングル。

2枚組アルバム『Mitsuko Mori』(1995)からのシングルカット。

①カーテンコール 日本テレビ系全国ネット「いつみても波瀾万丈」エンディングテーマ
作詞:秋元康、作曲:筒美京平、編曲:萩田光雄
久保田早紀「異邦人」(同じく萩田光雄アレンジ)を思わせるドラマチックなイントロに意表を突かれる。どっしりとしつつ緊迫感のあるサビはじまり。75年の重みを感じる歌声は、歌唱力がどうのピッチがどうのというレベルを超えている。「カーテンコール 私の人生を カーテンコール 振り返る」「すべて悔いはない」森光子の舞台人としてのキャリアの総括とも、臨終の際に脳裏をよぎる走馬燈的情景ともとれる秋元康の詞も見事。

②星が降るまでここにいましょう
作詞:秋元康、作曲:鈴木キサブロー、編曲:萩田光雄
こちらは高齢者にもやさしい、ゆったりしたテンポとメロディ。人生を振り返る的な歌詞で晩年ムードを漂わせているけど、このあと森光子は「放浪記」を2009年(89歳)まで続け、92歳で亡くなった。

③①のカラオケ

定価1000円、中古で300円。
撮影協力:青山劇場
黒バックに浮かび上がる舞台にカーテン。手前には座席が見える。

「川の流れのように」 美空ひばり 1989年、ファビエンヌ・チボ 1992年

$
0
0
美空ひばり、生前最後のシングル。再発と別ヴァージョンと仏語カヴァーを並べて。

左から
「川の流れのように/あきれたね」1989.1.11 オリジナルシングル
「川の流れのように/裏窓」1991.7.21 再発盤
「川の流れのように2000」2000.3.1 ニューアレンジ

「川の流れのように」 ファビエンヌ・チボ 1992.4.25


では、オリジナルから。

①川の流れのように TBS系TV愛の劇場「ああわが家」主題歌
作詞:秋元康、作曲:見岳章、編曲:竜崎孝路
ご存知、美空ひばり晩年の代表曲。現在最も知名度が高い曲なんじゃないか。曲のスケール感、歌詞の内容ともにひばり版「マイ・ウェイ」あるいは「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」といって差し支えない内容。80年代末の秋元康といえば、おニャン子&とんねるずの作詞家でしょ、というイメージだった。当時とんねるずがひばりと接近していたのは知っていたが、まさか秋元が起用されるとは。平易な言葉で長い人生を振り返る歌詞は、スタンダードの風格十分。秋元にとっても元一風堂の見岳章にとっても代表作になった。このコンビでの成功作、とんねるず「雨の西麻布」(1985)をひばりが気に入って、という流れがあったのだろうきっと。気持ちよく声帯鳴らしてみました、と言わんばかりの余裕の朗々歌唱。

②カラオケ

③あきれたね
作詞:秋元康、作曲:見岳章、編曲:竜崎孝路
こちらはカラッと明るくノリのいいナンバー。「港の男は いつだって その日だけ 生きているのね」「あたしって ついてない そういう人に 惚れたのが悪い」ステレオタイプとも言えそうな港もの。

④カラオケ

定価1123円、中古で100円。
真っ赤な衣装で微笑むお嬢。


1991年の再発盤。

①川の流れのように②カラオケ
はオリジナル盤とまったく同じ。

③裏窓
作詞:たかたかし、作曲:弦哲也、編曲:竜崎孝路
若干のシャンソンテイストを感じるウエットな演歌。こういう曲のほうがひばりの声が活きるように思う。

④カラオケ

定価1100円、中古で108円。
オリジナル盤と同じ衣装の別テイク。


1998年にも「歌の里」とのカップリングで再発8㎝あり。これも赤いけど別の衣装。


2000年に「川の流れのように2000」として生まれ変わった。

①川の流れのように2000 映画「川の流れのように」主題歌
編曲:久石譲
ニューアレンジ。打ち込みのリズムとピアノ&オーケストラ。ひばりのヴォーカルはもちろんオリジナルと同じもの。オリジナルより少し長い5分7秒。アレンジは大袈裟でそんなによくないが、ひばりのヴォーカルエコーがオリジナルより薄くてくっきり聴こえる。映画「川の流れのように」は秋元康監督、森光子&田中邦衛主演。

②川の流れのように
オリジナルヴァージョンも収録。

③④カラオケ

定価1121円、中古で100円。
またもや同じ衣装の写真をモノクロ化。冥界から降臨のイメージか。


1992年のファビエンヌ・チボによるフランス語カヴァー。ポリスターから。

①川の流れのように -Dans tes bras, je suis chez moi-(仏語ヴァージョン) TBS系MBS「北緯35度の風」エンディングテーマ」
編曲:内藤慎也
フランス語詞のクレジットなし。ファビエンヌ・チボが書いてるのかな。フランス語からの日本語訳が記載されている(対訳:M. Morita)。
Fabienne Thibeaultは、70年代から活躍するカナダ出身の女性シンガー。イントロは二胡かな。東洋のイメージを表現しているのだろう。ひばりが朗々と歌ったサビでは、音を伸ばさずブツブツ切るような歌唱。フランスのメインストリームにこういうのあるよな、と思わせる出来栄え。

②川の流れのように(日本語ヴァージョン)
ファビエンヌ、日本語にも挑戦!Aメロで「細く長いこの道」「振り返れば 遥か遠く 故郷(ふるさと)が見える」とフランス人が最も苦手とする単語頭の「H」が頻出。(「ふ」はFUでそれほど苦労はしないのかもしれないが)しかしファビエンヌはがんばった。「遅く長い」にも「あるか遠く」にもならずに難所をクリア。かんばったで賞以上の価値はないトラック。

定価930円、中古で100円。
セーヌを進む観光遊覧船。右手にはノートルダム大聖堂が見える。裏はエッフェル塔。




Viewing all 624 articles
Browse latest View live